ゴンポリズム

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読むこと-観ること-考えること

記憶・青春・人生 ー「中国行きのスロウ・ボート」考察ー

今回レビューするのは『中国行きのスロウ・ボート』表題作だ。村上春樹の短編でもかなり有名な作品だと思うがその割にしっかりしたレビューが少ない、というよりごんぽりと似た考察・解釈があまりなく、一つの参考として紹介したい。 この記事では、二つの逸…

書評:鈴木透『食の実験場 アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』

本書はアメリカの食文化の入門書だ。そもそもアメリカの食文化と聞いてどのようなイメージを持つだろうか。マクドナルドやケンタッキー、ポップコーン、フライドチキン、コカ・コーラ...。そんなジャンクフードばかりが目立つアメリカでは、むしろ食文化…

書評:多和田葉子『献灯使』

今年の全米図書賞(翻訳文学賞)を受賞した話題作『献灯使』を手に入れた。手に入れた、というのはYahoo!ニュースで受賞が報道された翌日、都内丸善・ジュンク堂系列の書店で本書がほぼ売り切れになり、すんでのところで丸善某店にて取り置きできたからだ。…

考察:セカイ系としての『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)

アニメ『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)の感想・考察を書きたい。元々この作品は2009年に発売されたXbox360版ゲームソフトが原作らしく、2011年にアニメ化された。当時、同時期の『魔法少女まどか☆マギカ』とともにスマッシュヒットとなった有名なア…

書評:東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』

先日、オウム真理教幹部の死刑が執行された。あの出来事で僕が感じたのは、死刑がリアルタイムで進んでいく異常なまでのショー的演出だけでなく、複雑な喪失感だった。というのも、1990年前後に生まれた人々にとってオウム真理教という事件は独特のニュアン…

ある友人の死について

今日、僕が書くのはとても個人的な内容、ある友人の死に関する話だ。 大学を卒業してこの春で2年が経ち、学生時代の記憶も次第にぼんやりしてきた。最近、高校・大学時代をふと思い出すことがあって、ようやくあの頃を冷静に振り返ることができるようになっ…

書評:村上春樹「象の消滅」

今回読む小説は、またしても村上春樹の作品だ。初期の有名な短編の一つだが、意外にもネット上の書評は少ないように思う。彼のこの時期の作品はメッセージ性の強い荒削りなものが多く、えてしてまとまりすぎた中期以降の短編と比べると、逆に感想は書きやす…

考察:カーヴァー「足もとに流れる深い川」

久しぶりにレイモンド・カーヴァーを読む。村上春樹訳『レイモンド・カーヴァー傑作選』はどれもなかなか面白いのだが、訳者自身が「一発で見事レイモンド・カーヴァーの世界の中毒に引きずり込まれることになった」という「足もとに流れる深い川(So Much W…

書評:フォークナー『八月の光』

ウィリアム・フォークナーと言えば、アメリカのみならず20世紀を代表する世界的作家と言われている。フォークナーを読んだことのない英文科の卒業生はいないだろうが、それでも、この作家を愛読する日本人はどれだけいるだろうか。 フォークナーとの出会いは…

書評:斎藤眞『アメリカとは何か』

今回、取り上げるのはアメリカ革命史研究の大家、斎藤眞(1921-2008年)の著書である。戦後日本のアメリカ史研究を牽引した彼の名前は、アメリカ史をかじった読者なら一度は聞いたことがあるだろう。この本は、前々から多くの先生が薦めていてマークしていたの…

書評:福井憲彦『近代ヨーロッパ史 世界を変えた19世紀』

今回、取り上げるのは福井憲彦著『近代ヨーロッパ史 世界を変えた19世紀』である。もともと放送大学用のテキストらしく、近代ヨーロッパの歴史が初学者にも分かりやすく書かれている。高校世界史で学ぶ知識を少し詳しくした程度で、教科書的な記述も目立つし…

書評:フォークナー「あの夕陽」

今回は「あの夕陽」という短編の感想を書きたい。フォークナーの短編のなかでも最も有名な作品の一つだが、長編と比べると感想を書いている日本の読者は少ないようだ(今後もそのような作品をなるべく取り上げようと思う)。前衛的な作品が多い長編と比べる…

書評:フォークナー「納屋は燃える」

10月19日、岩波文庫からウィリアム・フォークナー『八月の光』の新訳が出るとのことだ。これまで、この作品の邦訳は新潮文庫の加島祥造訳であった。訳もそれほど悪くはなかったし、何より一冊になっていたのは読みやすく嬉しかった(岩波の新訳は上・下二冊…

解釈:村上春樹「レキシントンの幽霊」

最近『レキシントンの幽霊』を再読している。前回の「沈黙」に続き、今回は表題作の感想を書こうと思う。 「レキシントンの幽霊」は、村上ワールドで最も重要なキーワードの一つ、「異界」(「あの世」、「向こう側の世界」)が物語のメインにあり、ある意味…

書評:村上春樹「沈黙」

『レキシントンの幽霊』に収録されている「沈黙」という作品を今回は取り上げたい。この作品はなんでも中学の集団読書用テキストに掲載されているようで、意外と知名度は高い。 正直言うと、この短編は村上春樹のいつもの作品と違い、謎解きや不思議な要素が…

書評:村上春樹『1973年のピンボール』

村上春樹は大学時代に初めて触れて以来、愛読する作家だ。大学の著名な先輩としてごんぽりが意識する、数少ない一人と言って良い。と言っても最近の作品はほとんど読まず、『アフターダーク』あたりまだが。。。 今回、読んだ『1973年のピンボール』は、羊三…

考察:アニメ『僕だけがいない街』

最近、無性にアニメやドラマを観たくなる。そこで、何か面白そうなものを探していたところ、『僕だけがいない街』(2016年)というアニメがなかなか面白かったので感想を書きたい。 このアニメは「リバイバル」というタイムループ能力を持つ主人公(悟)が、…

ラジオの今後

ラジオドラマというものがある。YouTubeにも多くアップされていて、様々な物語を気軽に聴ける。SFから名作文学、創作小説までジャンルは様々で、放送時間も10分程のものから120分を超える長編まで揃う。私は今、そのラジオドラマにハマっている。 この娯楽の…

ゴンポリズムと愛読書

当ブログ、ゴンポリズムはごんぽりが本の感想や解釈を中心に書いていくブログです。 ごんぽりは小さい頃から読書感想文というものが苦手で、いつかすらすら書けるようになりたい、と思っていました。高校時代に読書に目覚め、大学時代は引きこもって本を読む…